協会ニュース 『陶説』平成17年3月号より

▼日本陶磁協会主催による「第5回やきもの文化講座」が4月24日(日)午後1時30分より3時30分まで、NHK青山荘(東京都港区南青山5-2-20)で開催されます。今回は陶芸家の中里逢庵氏(13代中里太郎右衛門)に、ご所蔵の名品と陶片をご持参いただき、唐津焼のルーツについて講演していただきます。参加費は3000円。先着100名までとなりますので、お早めにお申し込み下さい。お申し込み方法は、電話、FAX 、郵便でも受け付けます。お名前、ご住所、電話番号、会員番号をご記入の上、日本陶磁協会(〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台2-9 電話03-3292-7124 FAX 03-3292-7125)までお送り下さい。

▼平成16年度「日本陶磁協会賞」の候補者は、協会賞が18名、金賞が16名でした。推薦者は石崎泰之・乾由明・井上隆生・榎本徹・正村美里・杉山道夫・竹田博志・外館和子・林屋晴三・藤慶之の各氏。三浦弘子氏は次回から参加しますとのことでした。
 候補者の略歴および作品の図版を同封の上、選考委員(梅澤信子・金子賢治・唐澤昌宏・黒田和哉・中ノ堂一信・西田宏子・長谷部満彦・宮島格三・森孝一・弓場紀知・吉岡庸治・吉田耕三の以上12名)にお送りしましたところ、各々次の上位3名が選ばれました。

平成16年度金賞候補
 栗木達介 中島宏 加藤清之

平成16年度協会賞候補
 林邦佳 清水六兵衛 田嶋悦子

 1月19日午後1時30分より「平成16年度日本陶磁協会賞」の選考委員会が開かれました。当日の出席者は、梅澤・金子・唐澤・黒田・中ノ堂・西田・宮島・森・弓場・吉田の10名、長谷部・吉岡の両名は欠席でした。
 金賞候補については、栗木氏はこのところ作品の発表をされていないこと、中島・加藤の両氏については、今年秋に回顧展が予定されているので、それを見てからということになりました。よって、今回は金賞の該当者なしと決まりました。
 協会賞候補については、林邦佳・清水六兵衛・田嶋悦子の上位3名で争われた結果、林氏が6票を集めて協会賞に選ばれました。今回は金賞がないので、もう一人選ぼうということになり再投票が行われました。しかし、清水・田嶋両氏に5票、5票と分かれましたので、協議の結果、今回は協会賞3人ということに決定いたしました。

 林邦佳の推薦理由は、「中国古陶磁の巧技を自家薬籠中のものとした格調高い仕事ということでしたが、今回、林氏が選ばれたのは、その作品(五彩・豆彩・金襴手・染付)が古陶の観察と研究に基づいたものであること。そして、その高い技術と見識をもって、さらに林氏ならではの独自の世界を展開しつつあることなどが評価されてのことです。「色絵というのは装飾ではなく情念みたいなものじゃないか、とぼくは思うんです。つまり艶。(中略)艶は色に対してあるもんだから、ベースはむしろ正反対のものでなくてはいけない。深みのある素地、奥行きをもった渋い素地でなければ表の色絵は生きてこない。」
 この言葉は、古陶磁をじっくり観察し、これまで格闘を続けてきた作者でなければいえない言葉です。また、昨年の暮、銀座の黒田陶苑で開催された「林邦佳─姫瑞祥─」の個展は、氏の和様化の試みの一つであろうと思われます。

 8代清水六兵衛氏の推薦理由は「平成14~16年まで、陶による独自の構築的世界を、着実に固めつつある。千葉市美術館での展示では、ここ数年の歩みの全容を静かに提示した」ということでしたが、これまで清水氏は、タタラ板で作られた土の立方体を組み合わせ、雄大な陶の造形表現を続けてこられました。それは、いかにも建築科出身の清水氏らしい造形表現であり、色々な形をした箱、すなわち器でもあります。幾何学的なフォルムでありながら、必ずしも冷たさを感じないのは、その箱のなかに清水氏の思いが詰まっているからかも知れません。受賞の理由も、そんなところにあったような気がします。

 田嶋悦子氏の推薦理由は、「大原美術館での高木とのコラボレーション展示をはじめ、極めて意欲的な活動」「タカシマヤ美術賞の受賞」などが掲げられますが、女性陶芸家の受賞が少ないことも無関係ではないと思います。田嶋氏は、陶とガラスを組み合わせた植物をモチーフにした作品で知られていますが、この作家の魅力は、なんといっても作家自身から発散されるエネルギーというか、生命力でしょう。「自分の持つエネルギーを、植物のあふれるエネルギーと合体させた作品を作りたい」とは、作家自身の言葉ですが、今後、この陶とガラスの不思議な関係性をどう展開してゆくかが、この作家の見どころです。

▼日本陶磁協会九谷支部設立の式典が1月23日(日)、加賀市大聖寺地方町の石川県九谷焼美術館で開かれた。午後2時30分より、乾由明理事による記念講演「日本陶芸における『近代』とはなにか」と題して、九谷とも関係の深い陶芸家・富本憲吉を通して「近代」の意味について話された。続く設立総会にて北出不二雄氏が支部長に、理事には二羽嘉昭、正和久佳、下口進、寺前英夫、山本長左、平井義一、中矢進一、田嶋正和、角谷信一の各氏が、また会計監査には梶川成治、事務局員には達夫の両氏が選出された。なお、相談役には島崎丞理事、特別顧問として徳田八十吉、吉田美統の両名が選ばれた。以上、支部役員のほかに、藤本市洋、徳久梯次郎、清水恒次、下出健二、中村久一、正木春蔵、武腰潤、山近剛、石浦和男、田中知憲、苧野憲夫、中村元風、広岡邦章、北村隆、久藤妙子、長谷川紀代、美山富、池田緑山、河島洋、梶幸夫、藤井一雄、竹谷喜平、福島武山、米久和彦、浜谷信彦、堀江祐夫子、嶋田壽楽、蓮井芬、稲手忠弘、大聖雄厚、大家紹嘉、上口昌徳らが支部会員として参加。新・古陶磁の鑑賞会、研究会などを中心に活動を開始する。

▼工藤吉郎著『鍋島』(里文出版刊)の刊行を記念して、特別シンポジウム「鍋島 その秘と美」が開催される。講演者は荒川正明氏(出光美術館主任学芸員)「鍋島の文様を読み解く」。鈴田由紀夫氏(佐賀県文化課文化財指導担当主幹)「発掘現場からの最新報告」。家田淳一氏(佐賀県立博物館・美術館資料係長)「鍋島焼をめぐる徳川幕府と鍋島藩」。司会は工藤吉郎氏。日時は3月13日(日)15時から19時まで。会場は、東京・青山のホテルフロラシオン青山2階芙蓉。定員70名先着順。参加費10000円。シンポジウムの後、懇親パーティも行われる。お申し込みは、ハガキまたはFAX にて里文出版「鍋島」講演会係まで(〒160-0022 東京都新宿区新宿3-32-10 FAX 03-3352-7324)申込み〆切は3月5日です。

▼「第3回京畿道世界陶磁ビエンナーレ」テーマ “文化を盛る陶磁” が、4月23日(土)から6月19日(日)までの58日間、韓国京畿道の利川市、広州市、驪州市の3会場で開催される。世界67ヶ国、陶芸家3000名が参加する陶磁器の祭典だ。陶芸作家30名余の作品を一堂に展覧する「世界現代陶磁展」、67ヶ国の作家が腕を競う「国際公募展」、中国と韓国の青磁の美を比較展示する「世界青磁展」、住居空間を陶磁でデザインする「セラミックハウス II」など、世界の陶磁専門家たちが注目する4つの企画が開催される。詳しくは、第3回京畿道世界陶磁ビエンナーレ広報事務局 〒104-8158 東京都中央区銀座7-2-22(共同PR内)電話03-5777-8600(ハローダイヤル)

▼「日韓現代陶芸-新世代の交感展」が2月3日から20まで、愛知県陶磁資料館で開催された。3日は午前9時30分から本館ロビーで開館式があり、川上實館長は「将来の大家をめざし頑張っている若い人達の作品をエンジョイして下さい」と話し、弘益大学校の禹所長は、「これから10年、20年先の韓国の陶芸を引っぱっていく人達の展示会です」と説明し、柳領事は愛知万博に触れ、「21世紀の日本の産業の中心である中部地域で展示できることは意義あること」とスピーチをされた。なお、日本側からは、金澤美術工芸大学、京都市立芸術大学、愛知県立芸術大学の3校が、韓国側からは、慶一大学校、慶煕大学校、国民大学校、ソウル産業大学校、梨花女子大学校、弘益大学校の6校が参加し、およそ90名の大学院生による作品が展示された。

▼京都市と京都市埋蔵文化財研究所主催による特別講演会が、3月12日(土)午後2時から4時まで京都産業会館8Fシルクホールで開催される。樂家15代当主・樂吉左衞門氏が「樂茶碗とその周辺」について講話される。入場無料。定員760名。当日会場にて受付。また、「桃山陶器とお茶席」が3月19日、20日の両日、みやこめっせ京都市勧業館で催される。入場は無料。定員800名。申込み必要(締切3月9日)。お問い合せ先は京都市考古資料館 電話075-432-3245

▼焼き物のある日々の暮しのこと、協会・陶説に対する要望、なんでも構いません。本誌「読者だより」に会員の皆さまのご意見、ご感想をお寄せ下さい。

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