2020(令和2)年度 日本陶磁協会賞・金賞のご報告

◆2020年度 日本陶磁協会賞・金賞受賞記念 新里明士・十三代三輪休雪展のご案内◆
会期:2021年11月15日(月)~11月20日(土)
時間:11時〜17時
会場:壺中居  東京都中央区日本橋3-8-5


全国の美術館・博物館の学芸員、美術ジャーナリスト、ギャラリー関係者、陶芸家(金賞受賞者)で構成された推薦委員67名より候補者を挙げていただきました。その候補上位者の中より、2021年2月17日(水)に開催された選考委員会で8名の選考委員が投票した結果をふまえ、選出しました。

日本陶磁協会賞 新里明士[にいさと・あきお]

受賞理由

伝統的な蛍手を現代的な手法として注目される技法にしたこと、長きにわたり一つの技法に取り組む中で表現の幅が拡がり、それらを活かした作品が展開されていることが評価されました。
昨年度の和田的氏とともに、デザインが際立つ白磁の作家が続くことが一部議論になりましたが、推薦委員、選考委員ともに得票が多く、現代のやきものを象徴していると捉え、結果を尊重することとしました。

経歴

1977年
千葉県君津市出身
1999年
早稲田大学第一文学部 中途退学
2001年
多治見市陶磁器意匠研究所終了
2005年
第54回ファエンツァ国際陶芸展新人賞(イタリア)
2008年
第3回パラミタ陶芸大賞展大賞 第8回国際陶磁器展美濃審査委員特別賞
2009年
第3回菊池ビエンナーレ奨励賞
2011年
文化庁新進芸術家海外研修制度研修員(ボストン、アメリカ)
2014年
第19回MOA岡田茂吉賞新人賞
2017年
U-50国際北陸工芸アワード奨励賞
2017〜18年
カルロ・ザウリ美術館にて滞在制作(ファエンツァ、イタリア)
2018年
滋賀県立陶芸の森アーティスト・イン・レジデンス ゲストアーティスト
現在
岐阜県土岐市にて制作

日本陶磁協会賞金賞 十三代 三輪休雪[みわ・きゅうせつ]

受賞理由

十三代三輪休雪氏が多くの得票を得たことから、金賞に決定いたしました。
伝統的な産地の陶家に生まれ、一昨年は十三代を襲名しましたが、萩焼の枠に留まらず土の魅力を表現しようと挑戦し続けている点が高く評価されました。

経歴

1951年
山口県萩市に生まれる
1975年
米国遊学SFAI
1984年
現代の陶芸II 「いま、大きなやきものに何が見えるか」展
(山口県立美術館/山口)
1992年
「日本の陶芸『今』百選」展(三越エトワール/パリ、日本橋三越本店/東京)
1998年
Lazer 1998 Kazuhiko MIWA Project(秋吉台国際芸術村/山口)
2005年
第3回京畿道 世界陶磁ビエンナーレ 世界現代陶磁展「横断する陶磁芸術の境界」招待(韓国)
2007年
2006年度日本陶磁協会賞
2009年
「第20回日本陶芸展」招待(大丸/東京、大阪)
2012年
国際陶芸アカデミー会員、山口県選奨
2019年
十三代三輪休雪 襲名
2020年
「表現を切り拓いて | 十三代 三輪休雪(三輪和彦)の陶造形」展(山口県立萩美術館・浦上記念館)
2021年
「十三代 三輪休雪の茶陶」展(山口県立萩美術館・浦上記念館)

2020年度 日本陶磁協会賞・金賞受賞者選考経緯

2020年度「日本陶磁協会賞・金賞」の選考委員会を2月17日(水)午後1時より、銀座・貸し会議室にて開催しました。
選考委員の出席者は、赤沼多佳、石﨑泰之、伊藤潔史、伊藤嘉章、唐澤昌宏、黑田耕治、中ノ堂一信、森孝一の8名でした。
これに先立ち、美術館・博物館の学芸員、美術ジャーナリスト、ギャラリー関係者、陶芸家(金賞受賞作家)で構成された67名の推薦委員に候補者を協会賞・金賞それぞれ3名まで選定していただき、協会賞87名、金賞49名の推薦をいただきました。

日本陶磁協会賞

まず協会賞ですが、推薦委員の方々による選定の結果、候補は以下のとおりになりました(推薦者の多い順に掲載)。

7名―近藤髙弘(+金賞推薦者1名) 新里明士
6名―桑田卓郎
5名―川端健太郎
4名―伊勢﨑晃一朗 藤笠砂都子 森山寛二郎
3名―安藤雅信 石橋裕史 板橋廣美 大塚茂吉 加藤亮太郎 見附正康 山田和
2名―稲崎栄利子(金賞推薦者1名) 植松永次(金賞推薦者1名) 大石早矢香 梶原靖元(+金賞推薦者1名) 兼田昌尚 木村芳郎 黒田泰蔵(金賞推薦者5名) 五味謙二 高橋奈己 谷穹 富田美樹子 長江重和 中里太郎右衛門 服部真紀子 松永圭太 若杉聖子
1名―秋永邦洋 安藤郁子 伊勢﨑創 猪倉髙志 伊藤剛俊 伊藤みちよ 井上雅之(金賞推薦者7名) 植葉香澄 打田翆 大樋長左衛門 奥村博美 加藤清和 加藤智也 金重愫 かのうたかお 川﨑毅(金賞推薦者2名) 金憲鎬 熊谷幸治 小林佐和子 境知子 酒井博司 酒井田柿右衛門 塩谷良太 柴田眞理子 島村光 庄村久喜 須浜智子 高柳むつみ 田淵太郎 堤展子 津守愛香 徳丸鏡子 戸田浩二 長江惣吉 中尾純 中田博士 中村元風 中村康平 中村清吾 中村卓夫 西端正 西村陽平(金賞推薦者2名) 林茂樹 星野曉 松田共司 松田百合子(金賞推薦者1名) 松田米司 松本ヒデオ 丸田宗彦 南野馨 山口美智江 山田晶 山田浩之 吉田里香 吉野桃李 若尾経 安永正臣

得票の多かった候補者の推薦理由は、以下の通りです。

○近藤髙弘
「自らがロクロを作ることのできる最大の白磁大壺を制作し、登り窯で焼き上げ、陶芸の本性である作為と燃焼による無作為の造形を追究しています。白磁大壺は、技術的な挑戦だけでなく、陶の概念にとらわれない『うつわ』に対する思考と凛とした白の造形を追究しているようです。」
「大壺や茶碗などの器を制作しながら、自身ではコントロールできない偶然や必然などの相反する現象に美を見出すなどやきものの原点に立ち返り、概念性を意識した現代陶芸の新たな可能性を示している。」
「行き詰まりをみせる現代陶芸に用とオブジェの境界を超えた新しい陶芸世界を開いている。」
○新里明士
「ひたすらに刻まれたドットの装飾的な美しさにとらわれるが、自身の制作に向かう姿勢を確認する求道的な姿勢が表れた作品として独自の世界を確立した。年々、作品の精度を上げてきており、完成度も高い。」
「伝統的な蛍手をもたもたした感じではなく、現代的な感覚でシャープに光を孕む作品に昇華させている。この蛍手にも拘らず、かなり大きな作品で穴を細かく数多く開けながら作品を成立させている力量は圧巻といえるのではないだろうか。」
「作品に内包するあいまい性〈陶器/ガラス〉〈デザイン/伝統的技術・技法〉〈シンプル/複雑〉〈実用性/非実用〉日本におけるあいまい性〈縁側:内でも外でもない〉〈言葉:言外を読みとる〉〈障子:間接的光〉〈宗教:神仏混合〉。これらを光をモチーフに20年弱に渡り表現してきた姿勢を評価している。」
○桑田卓郎
「海外での評価が日本の陶芸の注目度を高めている。若い作り手にも刺激を与える存在である。」
「梅華皮を大胆に解釈し強烈なインパクトの作品を生み出した点。」
○川端健太郎
「生命感あふれる無2の作風。技法技術的なところも突出している。」
「手びねりで磁器の造形に独特の感性を示す。それでいながら日本のやきものが持つ情緒を有するために制作者を含む関係者に支持者が多いのだろう。」
○伊勢﨑晃一朗
「備前土の質感を生かし用と美の表現が新しい。」
「いわゆる備前の枠を超えた圧倒的な造形力が放つ存在感と品格は、唯一無二かと感じています。」
○藤笠砂都子
「水の勢い、風の流れ、生命力など、目に見えない動的なものを表現のテーマとしている。造形力に優れ、大型の作品を手がけるため、寡作でもある。」
「陶の造形が陶芸、陶芸・彫刻といった分類を必要とせずにただ作品の魅力・力のみで存在し得るのか造形的な陶作品の未来を担う作家。」
○森山寛二郎
「大量生産の道具の1つである轆轤の技術をあえて1点ものの造形作品に用いることに若くして着眼し、轆轤による造形の新たな可能性を切り開いたといえる。」
「小石原にいながらモダンで革新的なオブジェを創出している。」

以上の結果とともに、得票の上位者の陶歴、推薦委員による推薦理由および作品の写真など資料を選考委員の方々に送り、候補者を1位(3点)、2位(2点)、3位(1点)で選定していただきました。
選考委員の投票は、以下の結果となりました。
12点―新里明士
8点―桑田卓郎
7点―近藤髙弘
3点―井上雅之 戸田浩二
2点―伊勢﨑晃一朗 板橋廣美 黒田泰蔵 藤笠砂都子 見附正康
1点―島村光 森山寛二郎

1位に新里明士氏を選んだ選考委員は3名、桑田卓郎氏は2名、近藤髙弘氏は1名でした。
協議の結果、1位の新里明士氏を今年度の協会賞と決定しました。

日本陶磁協会賞金賞

推薦委員の方々による選定の結果、候補者は以下のとおりになりました(推薦者の多い順に掲載)。

8名―中島晴美 十三代三輪休雪
7名―井上雅之(協会賞推薦者1名)、三原研
6名―林康夫
5名―黒田泰蔵(協会賞推薦者2名)
4名―中里隆
3名―市野雅彦 今泉今右衛門 重松あゆみ 清水6兵衞 宮永東山
2名―伊勢﨑淳 川﨑毅(協会賞推薦者1名) 滝口和男 武腰潤 田嶋悦子 中村錦平 西村陽平(協会賞推薦者1名) 原憲司 3島喜美代
1名―伊藤公象 伊藤赤水 稲崎栄利子(協会賞推薦者2名) 井上泰秋 植松永次(協会賞推薦者2名) 小野哲平 梶原靖元(協会賞推薦者1名) 加藤委 金重晃介 川上力3 木村盛康 髙鶴元 神山易久 近藤髙弘(協会賞推薦者7名) 神農巌 髙内秀剛 竹中浩 田中佐次郎 玉置保夫 辻村史朗 長江重和 中島克子 福島善3 前田正博 松田100合子(協会賞推薦者1名) 水野
半次郎 森岡成好 𠮷田美統

得票の多かった候補者の推薦理由は、以下の通りです。
○中島晴美
「独自の表現を突き進み継続することで国際的な評価を得るに至った。美濃地域の重鎮として後進への指導や陶芸界全体への影響力など貢献度も高い。」
「コンセプトを陶にはめこむのではなく、土と焼成でしか生まれない有機的な作品を発表し、高い評価をえているから。」
「愛知教育大学の教授や多治見市陶磁器意匠研究所の所長として若手陶芸家を育成して日本の陶芸界に貢献しています。」
「 近代以降の、現代としての陶芸における作家性というものを作品を通して改めて示されたのではないだろうか。技術的な感心、観心に行きがちな陶芸において純粋に創造性、精神性へと誘われる意味を認識させられた。」
○十三代三輪休雪
「近年2017年「エルキャピタン」、2019年「表現を切り拓いて‐13代3輪休雪の陶造形」(山口県立萩美術館・浦上記念館)などを積極的に発表している。」
「柔らかい萩の白釉を力強い造形にたっぷりとかけた作品群は、他の追随を許さないのではないでしょうか。今年、横浜そごうで開催された「13代 3輪休雪35盌 展」も強く印象に残っております。」
「安穏とすることなく挑み続けてきた系譜が当代13代にも受け継がれている。ダイナミックで躍動感のある作品は今後も私達を魅了させてくれることだろう。」
○井上雅之
「1980年代から現在に至るまで、常に新たな造形を開拓してきた。教育者としての功績も大きい。」
「1貫して大型作品に取り組む姿勢。工芸の範疇に収まりきらないようなエネルギー溢れる作品を制作し、存在感を見せている。」
○三原研
「日本のみならず、海外でも現在これほど注目度の高い陶芸家はいないように思う。世界を代表するアーティストと言っても過言ではない。」
「焼締をモダンな印象に変化させた点。」
○林康夫
「戦後の現代陶芸の重要作家。作品は、独得な知的感覚世界を造形化して完成度が高く清潔感がある。」
「92歳にして、次々と新しいアイディアの作品を制作し続けていること自体が特記すべき点である。」
○黒田泰蔵
「ミニマルアートのような美意識で独自の世界を追求し続けてきた点を高く評価している。器物でありながら器物を超えた存在感、佇まいを備えた作品であること。」
「独特な轆轤の冴えにより、白磁の世界に新鮮な造形美をもたらした。その長年にわたる白磁1筋での造形追求の厳しさを讃えて。」
○中里隆
「世界各地で精力的に作陶しながら新しい唐津焼の可能性を追求している。何物にも囚われないおおらかな作風と用の美を邁進する姿勢と作品は陶芸本来の魅力を放っている。」
「北米、南米、欧州、中国、韓国と世界中で作陶をされ、日本の陶芸文化発信に精力的に努められた事に頭が下がります。蹴ロクロを駆使し、伸びやかに作られる作品群は、円熟味が増し、「大人の色気と余裕」さえ感じます。」

以上の結果とともに、上位者の陶歴、推薦委員による推薦理由および作品の写真など資料を選考委員の方々に送り、候補者を1位(3点)、2位(2点)、3位(1点)で選定していただきました。
上位者による選考委員の投票は、以下の結果となりました。

13点―三輪休雪
9点―中島晴美
5点―黒田泰蔵 林康夫
3点―三原研
2点―井上雅之 伊勢﨑淳 宮永東山
1点―三島喜美代

1位に三輪休雪氏を選んだ選考委員は3名、中島晴美氏は2名、黒田泰蔵氏と林康夫氏は各1名でした。
なお5点を集めた林康夫氏は、一昨年、昨年に続き多くの票を獲得しました。90歳を越えたいまでも変わることなく制作に励んでいる姿勢やこれまでの功績が改めて評価されました。また黒田泰蔵氏はこれまでも協会賞とともに票を得て、受賞こそ逃しましたが委員会のなかで高い評価が挙げられました。

以上が、2020年度日本陶磁協会賞と金賞の選考結果報告です。
今回の候補者の推薦の労をいただきました推薦委員は以下のみなさまです。
五十音順に、青山和平、秋山陽、荒川正明、市川文江、伊藤慶二、井上隆生、岩井美恵子、上西節雄、内田篤呉、梅田稔、大塚和美、小野公久、隠﨑隆一、加藤清之、金重有邦、川上智子、川瀬忍、栗原浩之、栗本洋、黒田和 、黒田草臣、纐纈幾世、小西哲哉、小吹隆文、坂本直樹、佐藤京、佐橋浩昭、島崎慶子、嶋田修、清水穣、下村朝香、正村美里、杉山道夫、杉山道彦、鈴田由紀夫、谷真琴、坪井明日香、戸田博、外舘和子、中林幸雄、野﨑潤、橋本龍史、花里麻理、林佳名、林大介、広瀬一郎、深井桂子、福島善三、福田朋秋、藤間寛、前﨑信也、鈎真一、松本健一、松本武明、マルテル坂本牧子、丸山博将、三浦努、三輪龍氣生、目黒伸良、森野泰明、八木光惠、矢崎孝子、安田尚史、横掘聡、吉澤敬子、米原有二、ロバート・イエリン

以上六十七名の方々です。ありがとうございました。

*敬称略

公益社団法人 日本陶磁協会

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