◆2024年度 日本陶磁協会賞・金賞受賞記念 川端健太郎・中里 隆・林 康夫展のご案内◆
会期:2025年10月20日(月)~25日(土)
会場:壺中居 東京都中央区日本橋3-8-5
※協会会員の皆さまへは、会期が近づいてまいりましたら『陶説』にて、ご案内の予定です。
2024年度「日本陶磁協会賞・金賞」の選考委員会を、2025年2月10日(月)に日本陶磁協会にて開催しました。選考委員の出席者は、赤沼多佳、石﨑泰之、伊藤潔史、伊藤嘉章、唐澤昌宏、川島公之、黑田耕治、瀬津勲、中ノ堂一信、森孝一の十氏でした。
選考に先立ち、美術館・博物館の学芸員、美術ジャーナリスト、ギャラリー関係者、陶芸家(金賞受賞作家)で構成された117名の推薦委員が、協会賞・金賞それぞれ3名まで候補者を選定し、協会賞162名、金賞48名を推薦しました。その上位者のリストを推薦(得票)数を伏せたかたちで選考委員に渡し、投票を行ったのち協議検討のうえ決定しました。
◆2024(令和6)年度日本陶磁協会賞・金賞◆
日本陶磁協会賞 川端健太郎[かわばた・けんたろう]
受賞理由
土の可塑性と釉の源であるガラスや鉄、銅の特質を活かした独自の表現が造形的な作品と器に発揮され、常に挑戦し続けていることが評価されての選出となりました。
経歴
- 1976年
- 埼玉県に生まれる
- 1998年
- 東京デザイナー学院陶器科卒業
- 2000年
- 多治見市陶磁器意匠研究所卒業
- 2001年
- 織部の心作陶展 大賞
- 2002年
- 益子陶芸展 審査員 特別賞
- 2004年
- 益子陶芸展 加守田章二賞
- 2007年
- パラミタ陶芸大賞展 大賞
日本陶磁協会賞金賞 中里 隆[なかざと・たかし]
日本陶磁協会賞金賞 林 康夫[はやし・やすお]
受賞理由
中里氏は、巧みなロクロの技を土台にしたうつわを中心とした作品と、国内外で積極的に制作を行い、新しい陶芸家像をつくられた点が評価されました。
林氏は、前衛陶芸の草創期から現代に至るまで、土による造形表現の可能性に挑戦し続けてきた足跡と、いまなお表現者として制作する姿勢が評価されました。
経歴 中里 隆
- 1937年
- 十二代中里太郎右衛門(無庵)の五男として、佐賀県唐津に生まれる
- 1959年
- 京都市立工芸指導所に学ぶ
- 1961年
- 現代日本陶芸展にて、陶彫「双魚」第一席受賞
- 1967年
- アメリカ、欧州、中近東、東南アジア、韓国などを一年間旅行
- 1971年
- 種子島へ渡島、西之表市古園に築窯し種子島焼を始める
- 1974年
- 唐津市に窯を築く
- 1985年
- 現代陶芸選抜展賞(一九八四年度日本陶磁協会賞)
経歴 林 康夫
- 1928年
- 京焼の林沐雨の次男として、京都市に生まれる
- 1947年
- 「四耕会」結成に参加、全展に出品
- 1950年
- 現代日本陶芸展、パリ・チエルヌスキー美術館<
- 1972年
- ファエンツァ国際陶芸展 グランプリ
- 1998年
- 京都市文化功労者表彰
- 2022年
- 京都府文化賞 特別功労賞
- 2024年
- 「林康夫 浪江に捧ぐ」(益子陶芸美術館)
2024年度 日本陶磁協会賞・金賞受賞者選考経緯
2024年度「日本陶磁協会賞・金賞」の選考委員会を、2月10日(月)に日本陶磁協会にて開催しました。選考委員の出席者は、赤沼多佳、石﨑泰之、伊藤潔史、伊藤嘉章、唐澤昌宏、川島公之、黑田耕治、瀬津勲、中ノ堂一信、森孝一の十氏でした。
選考に先立ち、美術館・博物館の学芸員、美術ジャーナリスト、ギャラリー関係者、陶芸家(金賞受賞作家)で構成された117名の推薦委員が、協会賞・金賞それぞれ3名まで候補者を選定し、協会賞162名、金賞48名を推薦しました。その上位者のリストを推薦
(得票)数を伏せたかたちで選考委員に渡し、投票を行ったのち協議検討のうえ決定しました
日本陶磁協会賞
推薦委員による選定の結果、協会賞候補は以下のとおりになりました。[得票数および氏名、カッコ内は金賞カテゴリでの得票数]
12票 川端健太郎
7票 稲崎栄利子(1票)
6票 高橋奈己・戸田浩二・見附正康
5票 牟田陽日
4票 井口大輔・五味謙二・佐藤雅之・澤谷由子・高橋朋子
3票 アイザワリエ・石橋裕史・今西公彦・小島憲二・津金日人夢・津守愛香・富田美樹子・長江重和・林茂樹・森山寛二郎
2票 猪倉髙志・池田省吾・井戸川豊・伊村俊見・岩村遠・上田勇児・植葉香澄・兼田昌尚・岸野寛・小林佐和子・近藤高弘(1票)・坂本章・スナフジタ・竹内紘三・福島武山(1票)・福本双紅・星野友幸・松永圭太・水元かよこ・安永正臣・山田和・寄神宗美・十六代樂吉左衞門
1票 青木拳・阿曽藍人・安斎賢太・安藤雅信・猪飼祐一・泉田之也・伊藤文夫・井上尚之・井上雅之(3票)・今泉毅・今野朋子・伊村利見・六代上田直方・植松永次(3票)・氏家昂大・馬川祐輔・梅津庸一・大岩智之・大原光一・岡田裕・小野哲平・梶原靖元(2票)・加藤智也・金重巖・北村純子・金徳姫・金憲鎬(1票)・金理有・木村盛康(1票)・木村芳郎(1票)・鯉江廣・古賀崇洋・後関裕士・後藤秀樹・小林英夫・小松純・西條茜・佐伯守美・小枝真人・酒井博司・十六代坂倉新兵衛・坂本拓磨・佐々木文代・澤田勇人・柴田眞理子・島袋常秀・島村光(1票)・清水志郎・下沢敏也・末廣学・須浜智子・高田谷将宏・高柳むつみ・高力芳照・多久守・武腰一憲・竹花正弘・田中佐次郎(1票)・谷穹・田原崇雄・田淵太郎・田宮亜紀・田村文宏・辻村史朗(2票)・辻村唯・寺本守・徳丸鏡子・豊増一雄・中尾純・十四代中里太郎右衛門・中里月度務・中田博士・中原幸治・中村康平・中村清吾・中村眞・奈良祐希・西岡悠・野口寛斉・橋本知成・八田亨・浜名一憲・浜野まゆみ・林康夫(9票)・早助千晴・東田茂正・藤笠砂都子・古谷和也・伯耆正一・星野暁・堀一郎・堀香子・堀貴春・堀野利久・前田晶子・桝本佳子・松島朝義・松田共司・松田米司・松林豊斎・三上亮・七代水野半次郎・道川省三・南正剛・南野馨・宮澤章・宗像利浩・村上躍・森岡希世子・森野彰人・安永頼山・柳井友一・矢野直人・山本亮平・𠮷田幸央・吉村茉莉・読谷山北窯・若林和恵(50音順・敬称略)
得票数上位11名の候補者について、推薦委員の推薦理由を以下に抜粋します。
川端健太郎
「川端さんは、置かれた環境や五感に響くものの刺激により、体の中から自然と湧き上がる感情が手元からこぼれ落ちていくように作品を作る。オリジナリティーに溢れた奔放なその造形は、一見何事にも囚われずに制作しているように見えるが、陶芸で最も基本となる土(磁土)の特性や釉薬の意味についても熟考し、実験を重ね現在に至っている。釉薬の基本成分であるガラス、銅、鉄を固体として意匠の一部としたことは、新しい陶芸の扉を開いたと言っても過言ではないと考える」
「国外での発表の機会を経て、その有機的、生命的な独自の表現がますます深まり、何か既存の文脈から逸脱していくような、川端さんでしかあり得ない表現というのが確立されつつあるようにみえる」
「生命感あふれる無二の作風。高度なエロース的詩情の発露がある。磁土という困難な素材を自由裡に駆使し、アクロバティックな造形と、非常なディテールの表現をなせる作家。すでにキャリアも充分である。技術技法的な面でも傑出している。四十代に入り受賞適齢期。近年海外での評価がとみに高まっている。現代美術との矩のりはすでにゆうに越えて活躍している。国内での評価に不足を感じる」
稲崎栄利子
「超絶技巧的な作品が近年陶芸界の注目を浴びる以前から、ひとえに自身の感性あふれる幻想的な創造の世界を、神業的な技量を持って精緻な作品を生み出し続けている特異稀な感性を持った陶芸家である。作品を一見した時、超絶技巧という言葉が前面に出てしまうが、決してその部分だけではなく、稲崎作品は作者の内面から出た姿であって、いわゆる世に言われている超絶技巧とは一線を画し独自性を持った作品である」
「一度見たら忘れられない強いインパクトを持つ、超微細な土の集積によって生まれる唯一無二のやきものの凄み。二十年以上にわたり、ブレることなく自身の造形を追求しており、超絶技巧の概念を覆す存在である。」
「一つの技法で制作する陶芸家が多い中で、作りたい作品に合った独自の技法を生み出し、超絶技巧の作品で高い評価を得ているから」
高橋奈己
「植物の種や実をモチーフとして、ヒダの陰影が美しい白磁作品を作る。彼女がつくる清新な茶陶作品は、年月を重ねる毎に洗練され、より茶味のある作風になっている。昨今は白磁にとどまらず、プラチナ色のゴージャスな作品、マットな漆黒の作品、青を少し練り込んだ「ゴルゴンゾーラ」と銘打つ作品も手がけ、その作域が一層広がっている。鋳込み成形した作品を磨きに磨き、エッジが立ったフォルムを作り上げ、そこに緊張感が生まれている」
「鋳込みによる白磁は、独自のゆらぎのある有機的な造形を生み出しており、茶の湯の器ではさらにその造形が洗練され、近年より魅力的になっている」
戸田浩二
「戸田氏の凜とした作品は実に清々しく、彼のきっちりとした人柄が作品に如実に現れている。対立する『白と黒』のみにこだわっているのも潔い」
「古陶や青銅器などからインスピレーションを得た独特な作品は、凜とした緊張感の中に静謐な気配を湛える。祈りの形ともいえる神秘的な佇まいからは、時空を超えて過去と現代がつながるような壮大なスケールを感じる」
見附正康
「卓越した技術によって、ここ十年余り多くのコレクターを夢中にさせている筆頭的存在。作品のクオリティ、作陶姿勢、展覧会活動など、トータルバランスが優れている」
「加賀赤絵細描という伝統技法を用いて、現代的な表現を見せる」
牟田陽日
「用途性のある〈うつわ的〉な作品から、コンセプチュアルな空間演出まで、表現方法とその幅は多岐にわたる。バックグラウンドにはロンドン大学で学んだ現代アートの経験があり、その上に九谷焼の技術、技法、伝統が加わり、近年はさらに試行錯誤を重ね、さまざまな技術や材料を取り入れた作品を世に送り出し続けている」
「年々人気が高まる中で意欲的に新作を発表し続けている。この湧き出る創造性は、作家としての個性をより確かなものにしている。発する言葉も、着地点を持たない独特の浮遊感があり、ボーダーレスという言葉がよく似合う」
井口大輔
「器のかたちに銀さびで線文を施す『銹陶』のシリーズについて、完成度の高い作品を生み出している。形と形全体に施す線文様がそれぞれによく結びついて、静かだが見どころのある作品が多い。今後も作品を見てみたいと思わせる」
「素材を見る眼が心の眼の如く、静謐、深淵。生き急がない制作スタイル」
五味謙二
「茶陶からオブジェまで、使って楽しむ、見て感じる(考えさせられる)幅広い作行きが魅力」
「造形力に優れ、重力に抗う物体自体の存在感のようなものを感じさせる塊としての作品は、焼成するというやきもの本来の制作過程を経ることで、土肌や焼き色によって、より力強い表現を実現している」
佐藤雅之
「世界四大コンペである2024台湾国際陶磁ビエンナーレでのグランプリを受賞するなど、業績が目覚ましい」
「2024台湾国際陶磁ビエンナーレでグランプリ受賞という快挙を成し遂げた、今年まさに旬の作家。笠間陶芸大学校で後進を育てる役割も担っており、これからの活躍がますます期待される」
澤谷由子
「卓越した技術と美意識により極められた作品群は、海外にも通用するメッセージ性とオリジナリティーを獲得している」
「うつろう空のような色の美しいグラデーションの磁器。自ら形成したそのボディにイッチン技法を駆使し、気が遠くなるような細かくも美しい幾何学文様を幾重にも盛り付けている」
高橋朋子
「2024年度の日本伝統工芸展でのNHK会長賞受賞ほか、近年の活躍や、金銀銅の各種の箔を用いた多様な展開が目覚ましい」
「基礎の磁胎を覆うように色箔を張り巡らす作品は、日本文化の箔芸術を彷彿させるだけでなく、ビザンティン芸術のエスニックさも感じられることから、ワールドワイドな活躍が期待できる」
「さまざまな賞の受賞など、本年の活躍は目覚ましい。金銀彩の繊細な装飾は言うまでもなく、それが白磁胎の美しさを引き立て、作品に存在感を与えている」
以上の結果とともに、得票数の上位者の陶歴、推薦委員による推薦理由および作品の写真など、資料を選考委員へ送付し、候補者を1位(3点)、2位(2点)、3位(1点)で選定していただきました。
選考委員による投票点数は、以下の結果となりました。
20点 川端健太郎
14点 高橋奈己
11点 見附正康
5点 稲崎栄利子・戸田浩二
2点 高橋朋子・近藤高弘
1点 佐藤雅之
さらに推薦委員の得票数の1位(川端氏/12票)に3点、2位(稲崎氏/7票)に2点、3位(高橋氏・戸田氏・見附氏/6票)に1点を加算した結果、最終順位の上位3名は、
23点 川端健太郎
15点 高橋奈己
12点 見附正康
となりました。
選考委員10名のうち6名が川端健太郎氏を1位に推挙し、今年度の協会賞に決定しました。
日本陶磁協会賞金賞
金賞も協会賞と同様に、推薦委員による選定の結果、候補は以下のとおりになりました。[得票数および氏名、カッコ内は協会賞カテゴリでの得票数]
10票 中里隆
9票 中島晴美・林康夫(1票)
7票 神農巌
5票 三原研
4票 重松あゆみ・中村錦平
3票 市野雅彦・井上雅之(1票)・植松永次(1票)・大嶺實清・鈴木五郎・前田正博
2票 梶原靖元(1票)・辻村史朗(1票)・田嶋悦子・福島善三
1票 安倍安人・伊勢﨑晃一朗・稲崎栄利子(7票)・内田鋼一・江口勝美・金重晃介・川上力三・金憲鎬(1票)・木村盛康(1票)・木村芳郎(1票)・八代清水六兵衞・桑田卓郎・神山易久・近藤高弘(2票)・島村光(1票)・杉本貞光・鈴木徹・滝口和男・田中佐次郎(1票)・中田一於・新里明士・西村陽平・原憲司・福島武山(2票)・福間琇士・松田百合子・望月集・山本篤・𠮷田美統・吉田喜彦・和田的
得票数上位13名の候補者について、推薦委員の推薦理由を以下に抜粋します。
中里隆
「国内をはじめ世界各地で制作してきた実績は、産地のやきものの新たな在り方を示しているように思う。何ものにもとらわれないおおらかさと、やきものを愛し、日常を楽しむという姿勢が表れた作品の数々は、普遍的な魅力に溢れ、金賞受賞に値する」
「躍動感あるロクロ挽きの作品は、造形、質感も含め大物から小品まで、芸術性が極めて高く、存在感は別格である。長年国内外で積極的に作陶活動を行い、日本の陶芸を世界に広めた功績は特に大きい」
「これまでの実績も、唐津における存在価値も、もちろん作品も申し分ない」
林康夫
「言わずと知れた前衛陶芸のレジェンド。まもなく九十七歳になる今も新作を制作し続けている驚異の創造力。土による純粋な立体造形を造形・テーマともに厳しく追求し、日本の陶芸界にその道を切り拓いた貢献度は計り知れない」
「走泥社の意義を現在にまで制作活動をもって伝えている功績は多大なものがある」
「林は昭和二十二年の『四耕会』の結成を機に在野という意識から自由な造形を試み、オブジェという立体造形を制作し続けている。国際的に評価される所以は、精巧な技術はもちろんのこと、研ぎ澄まされた感覚が類まれな世界を作り出しているからである。近年再び注目されている陶芸家であり、金賞にふさわしい。昨年の益子陶芸美術館で開催された『林康夫 浪江に捧ぐ』展では、東日本大震災で被災した福島県浪江町の廃屋をモチーフとした作品を発表し、注目を集めた」
中島晴美
「今まで成し得ることが非常に困難だった磁土の手びねりでの制作を、特異な磁土を開発し作品を作り上げることを可能にした。球体状のものがモコモコと積み上がり、また時として湧き上がってくるような、ドット文様をまとった特異なフォルムを持った作品は、近年ますますその造形に自在性を増している」
「手びねり技法で磁土を扱う困難さに立ち向かい、長年にわたって独自な作品づくりを続けている。また、若手作家育成に力を入れてこられたことを高く評価したい」
神農巌
「湖国の空の蒼と水の碧に生命のイメージを重ね、清楚で優美な堆磁表現で独自の精神性豊かな作風を確立。日本伝統工芸展を軸に個展や企画展など第一線で活躍するとともに、日本工芸会理事として陶芸界の発展と後進の指導育成に寄与してきた。これらの実績が評価され、2024年度には重要無形文化財『青磁』保持者の認定を受けている。その充実した仕事ぶりは、秋から冬にかけて大阪・京都・東京・名古屋を巡回した記念展でも明らかである」
「堆磁をさらに極めつつ、無釉の作にも挑み、常に新たな試みを続けている。その仕事の丁寧さ、美しい仕上げへのこだわりは、日本のやきもの界において欠かせない質と造形を担保している」
三原研
「土、やきものによる独自の表現世界を築き上げている。ストイックな制作姿勢は一貫している」
「静かなファイターである。今まで見たこともない造形美を生み出すその原動力は、人里離れた山間で自然に接し、出雲の陶土と向き合うことから始まる。掌が思考になるほど奥深いものはない」
重松あゆみ
「独自の感性で表現する造形に取り組み続けている。作品がまとう色彩、影が作家の世界を作り出している」
「縄文をテーマとした最近作は大作で、いずれも造形の複雑さを持ちながらも優美な素晴らしい作品ばかりである。色彩も豊かで心地よい」
中村錦平
「陶芸界での足跡は高く評価されるべき」
「一九九八年ごろから造形的な抽象の陶による制作を発表、同時にこの動向の発展に寄与する多くの評論を発表した」
市野雅彦
「丹波に新しい表現を興したのは言うまでもなく、今なお進化している」
「丹波焼という伝統的産地の中で、伝統や素材にこだわりながら新しい造形や意匠を凝らした独自の作品を生み出し続けている」
井上雅之
「多摩美術大学での後進の教育において、日本における巨大な陶造形の分野に、現代でも大きな影響を及ぼし続けている」
「現在ではなかなか出てこないダイナミックな陶芸表現。時代を築いた表現だと再認識している」
植松永次
「陶芸家であり、彫刻家である。自らの内に表現したい形があり、それを実現するための類稀な技術を持つ。その目指すところ、表現と技術の両面で多くの若い陶芸家の星となっている」
「手をかけていないように見せる造形は、いつも新鮮。どこか可愛らしいカタチが童心をくすぐるのだと思う。それを飄々とこなし、美術館でも展示できる説得力がすごい」
大嶺實清
「沖縄の伝統的なやきものから着想を得て伝統的な技術を尊重しつつも、それを現代的な美意識や技術で再構築している。自然との調和や素材の本質を見極める姿勢は、単なる職人技を超えた深い芸術的洞察を感じさせる」
「壺屋焼等の窯元に属さず、独力で沖縄の陶芸を身につけた先駆者の一人。民藝隆盛の沖縄陶芸において、沖縄県立芸術大学での研究や指導を通して沖縄陶芸におけるアートの土壌を醸成してきた。沖縄の現代陶芸史を語る上で欠かせない陶芸家」
鈴木五郎
「鳴海織部、弥七田織部、黒織部、織部黒など、各々が芸術性豊かで多くの後進たちに与える影響は大きい。その貢献度は金賞に値する」
「型破りで独創的な制作技法を、ワークショップでオープンにしている。素材、焼成について熟知している」
前田正博
「独自の色絵磁器を確立し、精力的な制作活動及び展覧会を開催し、日本の工芸界の発展に大きく貢献している」
「現代という時代性を反映した、新しい色絵磁器の世界を開拓し続けている。常にフラットでブレないその姿勢が素晴らしい」
以上の結果とともに、得票数の上位者の陶歴、推薦委員による推薦理由および作品の写真など、資料を選考委員へ送り、候補者を1位(3点)、2位(2点)、3位(1点)で選定していただきました。選考委員の投票点数は、以下の結果となりました。
19点 林康夫
17点 中里隆
10点 中島晴美
5点 三原研
4点 井上雅之
3点 辻村史朗
2点 中村錦平
さらに推薦委員の得票数1位(中里氏/10票)に3点、2位(中島氏・林氏/9票)に2点、3位(神農氏・7票)に1点を加算し、最終順位上位3名は、
21点 林康夫
20点 中里隆
12点 中島晴美 となりました。
1位に林康夫氏を推した選考委員は5名、中里隆氏は3名、中島晴美氏と辻村史朗氏が各1名でした。協議の結果、中里隆氏と林康夫氏の2名を今年度の金賞と決定しました。
以上が、2024年度日本陶磁協会賞と金賞の選考結果報告です。次に、今回の候補者の推薦の労をいただきました推薦委員は以下のみなさまです。候補者名ならびに、ていねいな推薦理由を頂戴いたしました。心よりお礼申し上げます
推薦委員
青野惠子(銀座一穂堂)・青山和平(ア・ライト・ハウス・カナタ)・芦刈歩(茨城県陶芸美術館)・阿曾一実(阿曽美術)・荒川正明(学習院大学教授)・飯田将吾(茨城県陶芸美術館)・市来真澄(山口県立萩美術館・浦上記念館)・伊藤慶二(陶芸家)・伊藤達信(スペース大原)・伊藤泰二郎(備前焼ギャラリー青山)・井上隆生(ジャーナリスト)・今泉今右衛門(陶芸家)・入澤聖明(愛知県陶磁美術館)・岩井美恵子(国立工芸館)・岩島利幸(かね利陶料)・梅田稔(ギャラリー器館)・上西節雄(研究者)・内田篤呉(MOA美術館)・榎本徹(荒川豊蔵資料館)・岡本安次(ギャラリー壺屋)・加藤清之(陶芸家)・金重有邦(陶芸家)・川上智子(多治見市文化工房ギャラリーヴォイス)・川北裕子(パナソニック汐留美術館)・川口勝也(川口陶楽苑)・川瀬忍(陶芸家)・倉成多郎(那覇市立壺屋焼物博物館)・栗原浩之(うつわや涼一石)・栗本洋(ぎゃらりい栗本)・纐纈幾世(ギャラリーこうけつ )・後藤修(山口県立美術館)・五島順(コレクター)・小西哲哉(中長小西)・小橋由佳(ギャラリー夢幻庵)・小林建夫(現代工芸藤野屋)・小林めぐみ(福島県立博物館)・小吹隆文(美術評論)・坂本大(ラパンアートオフィ
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美術館)・米原有二(京都精華大学伝統産業イノベーションセンター)・ロバート・イエリン(ロバート・イエリンやきものギャラリー)以上117名(五十音順、敬称略)*カッコ内=2024年12月15日時点での肩書